公証人:6割がミス 金銭貸借で多数発覚

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050124k0000m040119000c.html

 弁護士らが作る「公正証書問題対策会議」が昨年8月、法務省に情報公開請求。各地方法務局長名で作成された03年分の「公証役場検閲報告書」が公開され、分析を進めていた。
 分析結果によると、全国552人の公証人のうち59.4%に当たる328人が何らかのミスの指摘を受けていた。ミスは1126件で、うち672件が公正証書作成の関連。委任状に関するミスも145件あった。
金銭貸借の公正証書に関しては、債権額が違っていたり、委任状の内容と支払い方法が違っていたものがあった。公正証書は、確定判決と同じ効力があり、高利貸業者が差し押さえに使えるため、弁護士らは「金額の間違いは軽率では済まされない」と話す。
 債務者の委任状に押された印影と印鑑証明の印影が一致しないと指摘されたケースもあった。委任状の無断作成をめぐるトラブルについて、日本公証人連合会は「印影をきちんとチェックすれば、依頼者本人からの委任の意思確認は必要ない」としているが、そのチェックさえ不十分な実態が明らかになった。

 双方の合意を明確にし、未然に紛争を回避するための制度が、かえって紛争を複雑化しているようでは全く話になりません。
 公証人については司法・法務官僚の天下り任用*1から本来の選考試験による任用に切り替えるとともに、公証人の過失によって生じた損害につき、国にではなく公証人個人に直接賠償責任を問えるようにしなければ、現状を改善することは出来ないでしょう*2

 さしあたり制度改正の具体的予定はないようですので、(当然ながら)公正証書の作成にあたって安易に他人に任せきりにせず自己防衛に努める以外ないのですが、もしも勝手に作成されてしまったときは、その公正証書の効力を争ってみる価値はあるかも知れません。
 例えば公正証書遺言について、法律専門誌等で公表されている事例だけで24例中11件で公正証書を無効とする判決がでているようです*3

<追記>

 「公証人問題」は、落合先生のブログhttp://d.hatena.ne.jp/yjochi/20050124でたびたび取り上げられているテーマです。落合先生は、司法・法務官僚の天下り先であり、かつ司法分野における巨大な利権となっている公証人制度を厳しく批判されておられますが、一度は司法・法務官僚として同じ法曹界に身を置き、公益の実現と国民の権利保護に携わっていた経歴を持つはずの公証人が、全く自浄能力を持たず漫然と過ごしている「惨状」を情けなくお感じになっておられるということでしょう。

なお、日本の公証制度の実情については、HP「由利弁護士の部屋」(http://www.marimo.or.jp/~yuri/)内の『日本公正証書物語』が非常に詳しく、裁判所や弁護士、銀行や“ヘビーユーザー”である消費者金融などが公証人と公証業務をどのように評価しているかよくわかります。

*1:従来、公証人は法曹資格を有する者から全て任用されており(公証人法13条)、公証人法12条に基づく選考試験は一度も実施されたことがありません。

*2:公証人問題については、1月20日の日記で新聞記事とともに同趣旨を述べています

*3:木内是壽「日本公証人連合会から全国銀行協会宛の『公正証書遺言に基づく預金の払戻し等についての要望』について」判例タイムズ第1163号(2005年1月1日)92頁以下