観光ポスター:「年増女」表現に苦情で廃棄 三重

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050312k0000e040061000c.html

 池波正太郎が書いた一文を載せた三重県観光連盟の05年キャンペーンポスターが、文言の一部に不快と感じ取られる部分があるとして、連盟は11日、配布したポスターを回収し廃棄すると発表した。「年増女」などの表現に対する苦情が寄せられたため。
 ポスターは、「作家が愛した三重の味」と題して2600枚ずつ6種類作製。井上靖ら著名な作家の小説やエッセーで紹介された三重県の食べ物と、風景写真、作品中の文章を組み合わせている。
 回収されるのはそのうちの一つで、伊賀牛をPRするポスター。72〜73年、週刊誌に連載された池波正太郎のエッセー「食卓の情景」から、「松阪の牛肉が丹精をこめて飼育された処女なら、こちらの伊賀牛はこってりとあぶらが乗った年増女である」などの一文を、伊賀地方の田園風景、すき焼きの写真と共に掲載している。
 連盟によると、2月下旬、同県伊賀市内の観光協会が事務所玄関に張りだしたところ、女性十数人から「処女とか、年増女という表現は不快」との苦情が寄せられた。連盟は県の人権担当者に問い合わせ「エッセーが書かれたのは30年以上も前。時代にそぐわない」と指摘され回収を決めた。木崎喜久郎専務理事は「原文の引用だから問題ないと思ったが、認識が甘かった」と話した。
 今回、池波作品使用の窓口となった日本文藝家協会(東京都千代田区)の伊藤愛子著作権管理部長は「池波文学の否定ではなく、不特定多数の人が見る観光ポスターで、不快と感じる人がいるというので回収を了承した。しかし、池波作品の独特の表現の中で、2語だけを取り上げられても……」と戸惑っていた。

 なんだかねえ。私は過剰反応だと思うし、こういうところで“差別”っていうタームを使うから、ありがたみがなくなって肝心のところで耳を貸してもらえなくなるんじゃないか、なんて思うんだけれども。 “六曜”が掲載されていた市職員用手帳を見て、「迷信を使用し続けるのはけしからん」と猛抗議して市に回収廃棄させた人権団体もあったけれど、もしも観光用ポスターに文化財指定を受けた曼荼羅絵を使っても「曼荼羅なんて迷信を(略)」って抗議して回収させるのかしら。文学や芸術はたいてい宗教や迷信と結びついているから、それも許容しつつ表現の価値を見出さなければ、なんとも味気ないことになると思います。
 こう書いたら“人権問題に造詣の深い”方々から「ポスター撤去の必要性」についてご教示いただけるのかな。
 ちなみに人権擁護法案に従えば、別段規制の対象にはならないと思われます。なぜなら特定の人物に向けられたものではなく、また法案第三条第一号にあたる不当な差別的取り扱いをする意思を表した広告ではないから。