募金箱窃盗で中2男子逮捕/広島県警

http://www.shikoku-np.co.jp/news/news.aspx?id=20050221000194

 広島県警は21日、スマトラ沖地震義援金の募金箱を盗んだとして窃盗容疑で中学2年の男子生徒(14)を逮捕した。被害は約500円だが、県警は「善意を踏みにじる行為」と逮捕理由を説明している。

 この事件を知ったとき、初めは「最近、募金を装った詐欺や振り込め詐欺など、人の善意や不安につけこんだ犯罪が多すぎる。厳しい処分はこの少年のためにも有益だ」と容認していました。しかし、後から疑問がわいてきました。

1) この事案は、果たして逮捕状発布の要件を満たしているのか?
2) 警察は、法の擁護者か道徳の擁護者か?

 刑訴規143条の3は、「逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らして、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない」と規定しています。
 中学2年の男子生徒に「逃亡のおそれ」があったのか、また、単純な窃盗行為に「罪証隠滅のおそれ」があるのか、まったくもって疑問です。
 兎にも角にも、裁判官が逮捕状発布の要件を満たしていると判断したのですから、記事中にあらわれていない「諸般の事情」があったのだろうというほかないのでしょうが、やはり釈然としません。
 記事によると県警は、「善意を踏みにじる行為」であることを逮捕理由としていますが、この理由では“逮捕”が捜査遂行上の必要からではなく、身柄を拘束することで事実上の制裁をくわえる目的から行われたかのように聞こえます。
同じ500円でも、そこに込められた意味は様々であるということはわかります。しかしその意味を教えるのは家庭や学校のはずです。また「善意を踏みにじる」行為に対して厳しく問責し、相応の制裁を与えるべきだとしても、それを行うのは裁判所であって警察ではないように思います。
 さてこの事件、逮捕したからには次は送検ですね。検察の裁量で家裁に送致しないことってできましたっけ。犯罪の嫌疑があるのは間違いなさそうですから、検察は少年を家裁に送らざるをえないのではないかと。家裁は審判不開始というところでしょうか。まさか500円の窃盗で少年院送致なんてできないでしょうし。少年が今回の逮捕によってヘンにひねくれてしまわないことを願います。自らが引き起こしたことではあるのですから。