全国で仮出所609人が所在不明

http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050210it01.htm

刑務所からの仮出所者が、刑期満了までの保護観察期間に所在不明になるケースが相次ぎ、昨年10月末時点で、全国の仮出所者8270人のうち609人が不明になっていることが9日、法務省の集計でわかった。
保護観察所では、観察官や保護司が所在確認のため、不明者の親族、知人と電話や手紙で連絡を取るが、「手掛かりのないケースがほとんど」(同省保護局総務課)。保護局関係者は「人員が十分でない保護観察所による捜索には、限界がある」と話す。 
 警察など捜査機関への捜索協力要請については「所在が確認できて、身柄を確保する時以外には、人的協力を求めにくい」としている。 
 一昨年に仮出所を取り消され、再収監された1035人のうち、86・7%の897人が再犯者で、同保護局は「所在がはっきりしていても、保護観察期間に罪を犯す者が少なくない」としている。 

 「8270人中609人が所在不明」という記事の書き方では、いかにも保護観察所の怠慢のように見えますが、保護観察対象者は仮出所者だけではなく家庭裁判所で保護観察処分となった少年(1号)、少年院仮退院中の者(2号)、刑務所仮出獄中の者(3号)、そして刑の執行を猶予され保護観察に付された者(4号)など、約67,000人(平成15年末)に及びます*1
 これら保護観察対象者を約1,000名の保護観察官が担当するわけですから、保護観察官1名あたり約70人を担当しその内1名弱が行方不明となる計算になります。
 また、事実上保護観察所に所在不明者を追跡する能力がないにもかかわらず、仮釈放者の遵守事項違反(所在不明等)が“罪”ではなく“矯正教育の不足の結果”という位置づけであるため、保護観察所にとってみれば捜査機関に所在不明者の追跡を依頼することが他の役所に「尻拭い」を依頼しているようで抵抗を感じてしまうのでしょう。
 先日落合先生が提案されていたようなGPS発信機などによる所在把握手段の確保を検討する前に、仮釈放者の遵守事項違反に対する制裁を“単なる仮釈放取り消し”ではなく、それ自体が罪となるよう新たに規定すれば、保護観察所は“尻拭いを依頼”するのではなく堂々と捜査機関に“告発”でき、捜査機関側も所在不明者の追跡に取り組みやすくなり、また当の仮釈放者も、収監期間の長期化を招く行動をためらうようになるのではないでしょうか。