「対案」が出てくるらしい。

人権委の権限縮小検討 自民反対派、党内調整へ
 政府の人権擁護法案に反対する自民党議員でつくる「真の人権擁護を考える懇談会」(会長・平沼赳夫経産相)は27日午後、党本部で開いた会合で同法案の対案づくりについて詰めの協議をした。来週から党執行部との調整を本格化させる方針。
 対案では、人権救済機関として設置される「人権委員会」は出頭要請や立ち入り検査などが可能で、権限が強大すぎるとして(1)法案通り、公正取引委員会などと同じく国家行政組織法3条を根拠に設置するが、権限を縮小する(2)同8条に基づいた審議機関とし独立性を弱めた組織にする−−の2案を検討。
 また、人権侵害を調査する「人権擁護委員」の選任基準については、日本国籍を持つ者に限定する国籍条項を設ける方向。ただ公明党は国籍条項に否定的なことから、自民党内の推進派の一部では、北朝鮮による拉致問題解決に支障が出ることを懸念する反対派に配慮し、「国交のある国」とする案も浮上している。
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2005052701003870

 政府案の対案を作ろうとしても、時間的制約がありますからねえ。

 (1)は、要するに「特別調査」について、なくしてしまうか虐待に対象を限定するってことでしょう。後者なら理解できます。差別助長行為に対する特別調査の必要性などについては議論の余地があるなあと思っていましたから。でも全部なくしちゃうとなると、個別法の網から漏れた領域で生じた虐待などに対応できませんから、やはり「特別調査」は設けておいたほうがいいんじゃないかと思いますが。
 まあ、法務省案から引き算するだけですから、考えるのも簡単でしょうね。

 (2)については、これだけではよくわかりませんね。まず「8条機関」とは、国の行政機関に附属し、その長の諮問に応じて、特別の事項を調査、審議する合議制の機関をいい、国家行政組織法8条の「法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができる」との規定を根拠に行政機関に設置されるものを言います。従って政策決定の責任はあくまでも大臣にあり、8条機関にはないとされていますが、電波監理審議会など、例外的にその答申が大臣の意思決定を法的に拘束するものもあります(参与機関)。
 委員の任命については、先に例として挙げた電波監理審議会のように独立行政委員会並みの選任手続を定めたものもあれば、中央教育審議会のように実質上関係団体から推薦を受けた者を文部科学大臣が任命するものもあります。委員は原則として非常勤です。
 審議会の庶務については、基本的に所管府省内の既存部局が担当するものとされておりますので、おそらく現行の人権擁護局が担当するということになるでしょう。
 8条機関はバリエーションが豊富ですから、対案の概要が明らかにされないことには検討のしようがないのですが、どのような形になるにせよ、調査権限は大臣に帰属することになりますね(審議会は大臣の諮問に対して答申するものであって自ら調査したりするものではありませんから)。
 ところで、訴訟参加手続が設けられるとしたら、被告が国の場合どうなるんでしょう。原告補助参加人と被告のどちらも訟務検事ってことになるんでしょうか?
 
 いずれの案も私の主張(「糾弾行為を制限する規定を置き、公的紛争処理の利用を促進すべきだ」と「上訴手続を明記し、誤審からの救済を保障すべきだ」)とはすれ違っていますから、私にとってはあまり魅力的な対案にはならないような気がします。