薬害訴訟で駄々をこねる訟務検事

「『古賀克重法律事務所』ブログ版*1より。
 薬害肝炎・福岡訴訟で、審理の迅速化を図るために原被告が準備書面をオンラインデータ形式でやり取りしていたところ、被告(国)提出の準備書面を原告側代理人が自己のホームページで公表し、これを不服とした被告(国)が「以降、準備書面のデータ交換を取りやめる」と言い出したとのこと。
 被告(国)によると、「ホームページでの準備書面データの公表は、原被告間の準備書面データ交換に関する合意において予期していたものではないので、そのように利用されたからにはもはや準備書面データを交換し続けるつもりはなくなった(意訳)」からだそうで、原告側代理人が譲歩して、「受け取った準備書面データをそのままホームページ上に公開することはしないから、審理の迅速化のための文書データ交換は維持しませんか」と持ちかけても訟務検事氏は「いえ、もうしません」の一点張り、結局物別れに終わったようです。

 さてはて。

 私は素人なので、まず「準備書面とはなんじゃらほい」というところから考えるわけですが、準備書面とは、当事者が口頭弁論において陳述しようとする事項*2を予告的に記載して裁判所に提出する書面ということのようです。これは、裁判所及び当事者が次回期日における弁論について相手方から予告を受けることによって、複雑な事柄についても理解したうえで口頭弁論に臨めるようにするためにということです。
 ですから、もともと準備書面に記載されている内容は公開の法廷で述べられる事柄です。さらに言えばこの訴訟は純粋な私人間の争いではなく、一方は国です。国は国益を代表して訴訟に臨んでいるのですから、その主張をどこに出されようと、堂々と胸を張っていればよいわけです。
 今回準備書面データの公開を“予期せぬ使用”として問題視している訟務検事は、国益を代表する自己の主張が容易に公開されてはならないものとお考えなのでしょうか。もしそうであるならば、私はそのような人物に国を代表してもらいたくはありません。
訟務検事といえば、検事さんの中でも準エリートというべき存在であると聞いたことがあります。駄々をこねるために検事になったわけでもないでしょうし、もう少し堂々と振舞ってもらいたいものです。
 このようなことで審理が遅れ、仮に薬害に対する救済が遅れるようなことがあれば、この訟務検事(というより法務省)はどのように責任を取られるおつもりなのかお聞かせいただきたいものです。

*1:http://lawyer-koga.cocolog-nifty.com/fukuoka/2005/02/post_6.html

*2:攻撃又は防御の方法、相手方の請求及び攻撃又は防御の方法に対する陳述。民訴法161条