桶川ストーカー殺人訴訟、両親・県警双方の控訴棄却

http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20050126/eve_____sya_____013.shtml

 埼玉県桶川市で1999年10月、女子大生猪野詩織さんがストーカー被害を受けた末に刺殺された事件(の控訴審で)秋山寿延裁判長は「警察が殺害の危険を知りうることは困難だった」と述べ、請求の大部分を退けた一審さいたま地裁判決を支持し、両親の控訴を棄却した。(中略)一審は「県警は不誠実な対応に終始し、警察への期待と信頼を裏切った」と認定。その上で、詩織さんへの名誉棄損事件の捜査を怠った分についてだけ県警の責任を認め、計550万円の支払いを命じたが、殺害との因果関係は否定したため、両親が控訴していた。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050126i511.htm
(この事件では)上尾署員が、詩織さんが出した名誉棄損の告訴状を取り下げるように要請したり、嫌がらせの被害を訴えた調書の改ざんなどを行っていたりしたことが発覚。元署員3人が虚偽有印公文書作成などの罪に問われ、有罪判決を受け、確定している。


 初動捜査を誤り大学院生が殺害されるのを防げなかった*1兵庫県警神戸西署の警察官はただ鈍感だっただけ(警察官としては致命的ですが)であるのに対して、埼玉県警上尾署の警察官は調書の改竄を行うなど、捜査をわざと行おうとしなかった点で、より悪質な印象を受けますが、切迫した身の危険が直ちにうかがい知れる状況ではなかったでしょうから、殺人との因果関係までは認めにくいでしょう。
 警察は被害者・遺族の方の無念さを受け止めて、実績で信頼回復を目指していただくしかないのですが、

「神戸西署、初動対応強化し成果 院生殺害から1年」
http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sougou/030304ke98910.html
 捜査部門の刑事課には新たに統括責任者の刑事官を配置。同時に刑事二課を設け陣容を厚くした。成果は挙がり、二〇〇二年の犯罪摘発件数は前年より八割増加。多くが同事件後の摘発だった。

「桶川女子大生ストーカー事件」
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/okegawa.htm
 茂田忠良県警本部長(は、桶川ストーカー殺人国賠訴訟の件に触れ)「原告もあまりお金を取れないと「高等裁判所に控訴しましょう』となるのではないか」(中略)県警がまとめた事件の調査報告書について「警察庁から『こんな報告書では世論は持たないぞ警察にもっと非があったのだろう』と言われて、不確かなことまで書いてしまった」とも述べていた。

さて、埼玉県警はこの事件から何か学ぶつもりがあるのでしょうか。

追記:

 この控訴審において、両親が「被害者が身の危険を感じていたこと」を示す証拠として故猪野詩織さんの書いた遺書を提出したところ、県は「その手紙は遺書とは言えない。遺書とはこういうものだ」と、あろうことか逃亡の末自殺した被疑者の書いた遺書(被害者や遺族を冒涜する内容を含む)を証拠として提出していたとのこと*2
 いかに裁判で真っ向から対立しているとはいえ、一人の女性の理不尽な死に対して、あまりにも無神経であると言わざるを得ない。