記者の目:二つの公務員 社会部・伊藤正志

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050120k0000m070147000c.html

 この記事も、落合先生のブログhttp://d.hatena.ne.jp/yjochi/20050120で紹介されていたものです。

 以前ある会社に勤務していたときですが、公証人に「宣誓供述書」という、ちょっと変わった公正証書を作成してもらったことがあります。

 あるとき勤め先で、複数の社員が取引業者と共謀して水増しした請求書を作成するなどして約3千万円を着服するという不祥事が起こりました。当時総務部員であった私は、顧問の弁護士さんの助言を仰ぎながら、刑事告訴及び民事訴訟の準備を担当しまして、そのときに、不祥事に加担した従業員3名に公証人の面前で宣誓させ、それぞれの供述書を作成してもらったのです。

 社内で予め従業員から聞き取った内容を文書にし、従業員に確認した上、公証役場に同行して作成を依頼したのですが、公証人とのアポイントの関係などから、それぞれ別の公証役場で行いました。内容は同じだったのですが、作成の手順は公証人によってまちまちでした。

 ある公証人は、まず我々を役場から出して、供述者がプレッシャーを感じないよう配慮し、その上で供述者に書類を音読させて、「この書類は、自らが犯罪に加担したことを告白したものだから、場合によっては自分に極めて不利になる可能性があるがそれでもよいか」と念を押して意思を確認しておられました。
 別の公証人は、同行者を待合ソファに待機させた上で公証人が供述者に読み聞かせ、「内容に間違いないね、この書類を作成してもいいのだね」と確認しておられました。
 また別の公証人は、同行者を同席させ、公証人が供述者に読み聞かせて「間違いないね」と確認しておられました。

 まあ、“公証人面前調書”自体にいかほどの証拠価値があるのか、という問題もあるのですが、公証人によって対応がまちまちであるのはどうなのかなあ、と感じた記憶があります。

 やはり、なまじ公証人が公務員であるがゆえに個人責任が問われないから、依頼者本人への意思確認や証書作成の効果等の教示をおろそかにする者が出てきて、結果公正証書の濫用を招いているのでしょうか。それとも“優秀で豊富な法曹経験の持ち主”である公証人のみなさんが「裁判所が法曹業界の先輩の怠慢を指摘することなどあり得ない」と高をくくっているのでしょうか。

 予防法務の見地から、公証人の重要性は今後ますます高まっていくでしょう。判検事の天下り先のままにして置かず、修習修了者から選抜する方式を取り、弁護士のように「第4の法曹」として開業させればよいのではないかと思うのですが。