前例のない難民の強制送還に懸念――UNHCRプレスリリース

http://www.unhcr.or.jp/news/press/pr050118.html

「UNHCRは、送還は国際法上、日本政府に課された義務に反するものであると見なしている。また、今回の送還は、前例がなく、海外にいる難民や災害被災者に対する日本の人道援助とは相容れないものである。」

クルド人親子を強制送還 国連の難民認定者で初めて

http://www.sankei.co.jp/news/050118/sha103.htm産経新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050119k0000m040087000c.html毎日新聞

上告中でも強制送還??
 不認定の取り消しを求めた訴訟では1審・東京地裁が請求を認めたが、控訴審で逆転敗訴(03年5月)し確定。東京入国管理局は17日、カザンキランさんと長男の仮放免更新を認めず再収容していた。(産経)
 大橋毅弁護士は「退去強制処分の取り消しを求め最高裁で係争中なのに送還するのは不当だ」としている。(毎日)

 係争中なのか確定しちゃってるのか、どちらなのでしょう。法務省としては、「たとえ上告審で係属中であっても、上告が直ちに行政処分の執行を停止させるわけではないので、粛々と手続を進めただけです」ということでしょうか。公定力恐るべし(ところで、もしも係争中であるなら、まだ最高裁は執行停止の決定を出していなかったのでしょうか?控訴審判決は2003年5月なのに)。

マンデート難民でも強制送還??
 法務省は「日本とUNHCR難民認定は目的や対象が違い、(認定)結果が異なることはある。マンデート難民だからといって、強制送還されないわけではない」と説明している。
 関係者によると、カザンキランさんはトルコで政府に批判的なデモに参加したことなどから身の危険を感じて脱出し、90年に来日。その後家族を呼び寄せ、96年に難民申請をしたが、不認定とされた。(産経)
 カザンキランさんは国連難民高等弁務官事務所UNHCR)の難民認定を受けており「認定された人が送還されたのは日本では初めて」(UNHCR駐日地域事務所)という。 (毎日)

 日本の難民認定の目的/対象が、UNHCRのそれとどのように異なるのか、ぜひ教えてもらいたいものです。難民の専門機関の判断と異なる主張を行うからには、そりゃあ説得性に優れたものなんでしょう。日本は、難民保護の基本的水準を定めるUNHCR執行委員会のメンバーのはずなのですが、こういうときは「国連中心主義」は影を潜めるようです。

追記(クルド人“難民”の強制送還問題について)

ザンキランさん家族らのHP内に「私たちは最高裁には上告しませんでした」とありましたので、強制送還時には、難民不認定処分の取消訴訟は係争中ではなかったようです(ほかに何らかの訴訟を提起していたかも知れませんが)。http://www.freewebs.com/kurdjapan/lifeinjapan.html

そうすると、カザンキランさん家族(と、その代理人)は、司法による裁定を諦め、UNHCRによる難民認定を拠りどころに政府へ譲歩を迫り、政治的解決を目指していたということでしょうか。