性犯罪者の保護観察強化へ 再犯防止策で法務省

http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=main&NWID=2005011701004873

 奈良市女児誘拐殺人事件の被疑者をかつて担当した保護司さんは、「はいはい」と適当な返事をしながら反省する気配のない彼を見て「更生しきれないだろうと感じた」と当時の印象を語っておられます。*1
 これは、その保護司さんに問題や落ち度があったことを示すものではなく、もともと精神医療や臨床心理の専門家でない保護司が行う指導には限界があったということでしょう。
 では、教育学・心理学の知識を有する保護観察官になら、性犯罪者を更生に導くことが期待できるのかというと、どうもそう簡単ではないような気がします。
 現在、約5万人の保護司と約1,000人の保護監察官とが協働して約7万人の保護観察処分者に対し更生指導を行っているわけですが、これはつまり、保護監察官1人当たり約70件の保護観察事件を抱えているということです。*2
 このような現状では、今以上にきめ細かい保護観察を性犯罪者に対して実施することは困難であるように思われます。また、仮出獄や執行猶予期間という限られた時間でどこまで指導が可能なのかについても疑問が残ります。

 保護観察所は近年、被害者支援機能や心神喪失者に対する医療観察機能をも求められるようになってきており、ますます担当業務は増加する一方です。*3
 
 昨日も書きましたが、保護観察官を思い切って増員するとともに、民間の医療・カウンセリング機関と協働体制を作る、また観察期間終了後も必要であれば引き続き矯正教育を継続できる制度にする。こういった手当てのないまま保護観察強化を唱えるだけでは、再犯抑止効果の向上は難しいでしょう。

*1:http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2004/nara/news/0103-126.html

*2:保護司と保護観察官の概数については、平成16年版犯罪白書http://www.moj.go.jp/PRESS/041129-1.htmlから、保護観察対象者数については、「平成15年度保護観察事件の受理及び終結人数http://www.moj.go.jp/TOUKEI/DB/hogo04.xls」からそれぞれ引用しています。

*3:保護観察所に「被害者支援官(仮称)」を設置するプランが検討されているとのことですが(http://www.294594.jp/misc/tp_disp.asp?id=21)、現在各検察庁に配置されている「被害者支援員」との関係がどのように位置づけられるかは不明です。また、池田小の児童殺傷事件を契機に心神喪失医療観察法ができ、これに伴い新たに精神保健観察官が73人増員されることになりました。