続・「盗撮の疑いで逮捕の修習生釈放」

 昨日、東京地裁内トイレで盗撮しようとしていたとして逮捕された修習生が嫌疑不十分で釈放されたニュースに対し、
「『威圧的な取調べに、つい自白してしまう』修習生ってのも、どんなもんなんだか」
との感想を抱いたのですが、この件について落合先生がご自身のブログにおいて貴重なエピソードを語っておられます*1

 非常にかいつまんで言えば、
「取調官の間違った思い込みによって虚偽自白は起こりうるものだから、『やってないのに自白するわけがない』などと軽々に判断するものではない」
ということです。また、カウンセラーである佐藤康幸氏のブログ*2で紹介されていたのですが、「脳は他者の怒りや恐怖を無視できない」という研究結果もあるようです。ここからは推測ですが、取調官が純粋に真相究明に熱心であればあるほど、被疑者は取調官の発する怒りを含んだ言葉を無視できず、感情を揺さぶられてしまう。冷静さを欠いてしまえば、たとえ被疑者が法律家であっても、取調官に同調してしまうものなのかも知れません。
 ただ、そのような同調や迎合がありうるからこそ、逮捕直後の供述ほど信用性が高い*3とされ(うろ覚えですが)、裁判官もおおむねそのような経験則に沿って事実認定をしているように思いますし、彼もそのことを知っていたでしょう。
 前回同様、黒白については触れませんが、彼にはぜひ刑事弁護修習で得た知識を活かして、取調べに当たって虚偽自白への誘惑や圧力に抗してもらいたかったと思いますし、法律家でさえ虚偽自白への圧力に耐えられないのであれば、自白した検面調書が重視され、公判廷での否認供述がなかなか取り上げられない現在の刑事裁判はどうなのかな、とも思えてきます。